自覚的屈折検査の基礎シリーズ第4弾!!
前回は近視・遠視・乱視の自覚的屈折検査のピントの動きをイメージしました
初めての方は自覚的屈折検査の基礎①から読んでくださいね

今回は近視・遠視の矯正をおさらいして、乱視の自覚的屈折検査のピントの動きを練習します。

ざっくりとおさらいでーす。近視・遠視・乱視のピントの位置は?

・近視のピントは網膜より手前
・遠視のピントの位置は網膜の後ろ
・乱視のピントの位置は2つある

オッケー!じゃぁ、検眼レンズはピントをどんな風に動かすことができるでしょう?

・マイナスの検眼レンズはピントを後ろに動かす
・プラスの検眼レンズはピントを前に動かす
・マイナスの乱視レンズは前のピントだけを後ろに動かす

よくできましたー!!
少しづつ、ゆっくりとイメージできるようになるのが目標です。
そのうち、何をしてても頭に目の絵とピントのイメージ図が出てくるようになって、自覚的屈折検査のときにイメージ図がパッと頭に浮かぶ瞬間がきたら、最高ですね。
近視・遠視を矯正するときのピントの動き(前回のおらさい)
練習問題をしながら、自覚的屈折検査で近視と遠視のピントのイメージをおさらいします。
近視の自覚的屈折検査のイメージ
S-3.0Dの場合
ピントの位置のイメージ
自覚的屈折検査で網膜に近づけていきたい。
なので、使う検眼レンズはピントを後ろに動かすことができる、マイナスのS面レンズです。
S-2.0D入れると少しピントが網膜に近づく
S-2.5Dを入れるともっと網膜に近づく
S-2.75Dでもう少しで網膜にのりそう!ピントが網膜に近ければ近いほど、患者さんはクッキリ見えてきます。
S-3.0Dでもうまくにのりました!
近視のイメージはわりとシンプルです。
遠視の自覚的屈折検査のイメージ
遠視の場合は、網膜の後ろにピントがあります
このままだと、調節力が働いてピントを網膜にのせてしまいます。
調節力は左に向かって働きます。近くを見たり、遠視の人が網膜にピントをのせたいときに使う力です。
調節力が働いてしまうと、自覚的屈折検査で遠視の全部の量を調べることができません。
例えば、S+3.0Dなのに、調節力が働いてS+1.5Dで(1.2)見えると、目の屈折度数はS+1.5Dかな?と検査をする人は勘違いしてしまいます。
遠視の量を少なく測ってしまわないように、遠視の自覚的屈折検査は、ピントを網膜のなかに入れてから網膜に近づけていきます。
S+3.0Dの場合
まずS+4.0Dを入れて網膜のなかにピントを動かす。
遠視の自覚的屈折検査は

この人の遠視の度数は〇Dくらいかな?
そう予想した遠視より大きい度数のS面プラスレンズを使って、ピントを網膜のなかに入れます。
この場合

S+3.0Dかな
と予想しているので、+3.0Dより大きい度数の遠視の検眼レンズを入れると網膜のなかにピントが動きます。
網膜のなかにピントが入ったら、少しづつピントを網膜に近づける=遠視の度数を少なくしていく
S+3.5Dを入れて
S+3.25、S+3.0Dと入れます。S+3.0Dで網膜にピントがのります
おしまい。
S+2.0Dの場合
網膜のなかにピントを入れたいのでS+2.0Dより大きい遠視度数のS+3.0Dをいれます。
患者さんが

ぼやけて全然見えないよ
そう言うくらい一気にぼやかします。
患者さんには、正しい度数を測るためにぼやけることが必要であることを説明します。

大丈夫です。わざとぼやかしたので、今から少しづつレンズを変えて見えるようにしていきますね。
視力検査の基本は見えないところから見えるところへです



調節力の影響をかんがえたくない!派です






乱視の自覚的屈折検査のピントの動きをおさらい
S+3.0D:C-2.0D Ax90°のピントのイメージ
まず網膜のなかにピントを全部入れる。
後ろのピントが中に入るくらいなので、S+3.5Dくらい。
このときのプラス度数は、遠視の自覚的屈折検査のときのようにいっきに網膜のなかに入れるイメージではありません。
遠視の矯正をするときに網膜のなかにピントを入れるのは、調節力が絶対働かない場所までもっていくぞーという意気込みからです。
乱視の場合は、最小錯乱円を探すことが目的なので、後ろのピントが網膜のなかに入ればOKです。
このお話はまた具体的な矯正方法を書いたときにするので、今は

乱視は、ピントを網膜のなかに動かしてから、最小錯乱円を探すのね
このくらいの理解でOKです。
ピントが左に動いてから右に動くイメージです。
S+3.0D:C-2.0D Ax90°の自覚的屈折検査の話に戻ります。
後ろのピントが網膜のなかに移動したら
次にプラスの度数を減らして最小錯乱円の位置を探します。
この場合、最小錯乱円はS+2.0D
そこから、後ろのピントを網膜にのせます。
ここではS+2.0Dに乱視の半分量の1.0Dをプラスします。S+3.0D。
マイナスの乱視の円柱レンズを使って、前のピントを後ろのピントにくっつけます。
S+3.0DのレンズとC-1.0Dで前のピントが後ろのピントに少し近づいて
少しづつ乱視のレンズ度数をあげて
S+3.0DとC-2.0Dのレンズで前のピントが後ろのピントと重なります。
この状態で、網膜にピントがのっている状態
実際の自覚的屈折検査のときは、このままで視力を測ると(1.2)見える

ピントの位置が、網膜よりうしろっていう可能性もあるよねー
という不安が出てくるので
もう1度S+0.5D入れて網膜の手前にピントを動かしてから、網膜にピントをのせるという方法を使います

なんでそんな無駄な動きするの?
そう思うと思うけど、雲霧量が足らなかったとき
この状態になっていたときにめちゃくちゃ役にたちます。
自覚的屈折検査の基礎③でも書きました

でも、この話をドンドンしてしまうと、完全にパニックをおこします。今は

そうなのねー。最後にそんな確認作業が必要なんだ
くらいのイメージで大丈夫です。
※乱視の検査では、初めの最小錯乱円を探すところを省く方法もあります。というか、実際は省いていることが多い。いきなり後ろのピントを網膜にのせるパターン。この方法もまたゆっくり説明します。まずは自覚的屈折検査の基本となる考えを頭にイメージできるようになってから。そのあと、省けるものは省いて実際の外来で役に立てる技術にもっていくイメージです。

なにごとも、土台が大切!土台が柔らかくてふにゃふにゃしたまま積み上げるとグラグラになっちゃうよー
乱視のピントの動きを練習
練習問題で乱視のピントの動きをイメージしましょう
S+1.0D:C-3.0D Ax90°
目の度数イメージはこう
後ろのピントを網膜のなかに入れる(S+1.5Dくらい)
プラスの度数を減らして、最小錯乱円を探す(S-0.5D)
後ろのピントを網膜にのせる
乱視の半分の量(1.5D)をS面に追加してピントを手前に動かす→S+1.0D
乱視のレンズを使って前のピントを後ろのピントにくっつける
C-1.5D、C-2.0D、C-2.5D、C-2.75D、C-3.0Dと入れていく
S+1.0D:C-3.0D Ax90°
ピントが1つになった!
ピントが網膜にのっている状態か、確認します。
少しピントを網膜のなかにいれて(S+1.5D:C-3.0D Ax90°)
もう1度網膜にのせる(S+1.0D:C-3.0D Ax90°)
おしまい
おなじように違う度数でもイメージしてみます
S-1.0D:C-2.0D Ax90°
ピントの位置のイメージ
近視の乱視なので、ピントはすでに全部網膜のなかに入っています
最小錯乱円を探す(S-2.0D)
後ろのピントを網膜にのせる(S-1.0D)
ピントを1つにする(S-1.0D:C-2.0D Ax90°)
もう1回、1つになったピントを網膜のなかに入れる
ピントを網膜にのせる
おしまい
同じように考えます
- S+2.0D:C-1.0D Ax90°
- S+0.5D:C-1.0D Ax90°
- S-3.0D:C-1.0D Ax90°
- S+2.0D:C-3.0D Ax90°
次回の記事でピントのイメージ化と、もう少し詳しくピントの位置を説明する予定です。
今回は遠視の自覚的屈折検査のイロイロな考え方や、乱視の自覚的屈折検査の実際の話など

で、実際どうしたらいいの?
と、やや混乱した情報もあったかもしれません。
はじめは、基本のピントの動きのイメージを頭に入れることが大切。
なんとなくでいいので
近視・遠視・乱視の自覚的屈折検査のピントのイメージができれば

OK-!!
まとめ
今日のポイント
・実際の検査はピントは少し網膜のなかというイメージ

この方法なら、乱視のことイメージできる!かも。
そう思ったら、次回も続けて読んでくださいね。
まずは、自覚的屈折検査のときの近視・遠視・乱視のピントの動きをざっくりイメージできるようになれば上出来です。
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