割り切れない乱視はどうやって等価球面するか、についてのお話です。
前回は「基礎・考え方編」で、今回は「自覚的屈折検査・実践編」です。

自覚的屈折検査をしたら、レフの乱視と自覚の乱視が違う。どっちが正しいか確かめたい。でも等価球面しようとしたら、乱視が割り切れないから困る…
こんな場面で使えるので、ぜひ試してくださね。
⇓前回の記事はこちら⇓
自覚的屈折検査で割り切れないときは、プラスよりのレンズで等価球面する
まずは結論です。
自覚的屈折検査が終わった状態のピントの位置が網膜より少し手前なので
プラスよりかマイナスより、どちらのレンズと比べるのがいいかというと、プラスよりのレンズで比べたほうがいいです。
等価球面の計算のコツは前回の記事で詳しく解説しています。
ポイントをおさらいすると・・・
乱視を増やして等価球面するときは、1つおおきい乱視で考える
乱視を減らして等価球面する場合、1つ少ない乱視に置き換えて考える

あー。そうだったなぁー。
思い出しながら、具体的な方法を一緒に考えましょう。
自覚的屈折検査はピントが網膜の中で終了する

遠視・乱視・近視を矯正して最高視力を出して自覚的屈折検査終了!
このとき、ピントは網膜の少し中にある状態です。
教科書には
と書かれていることが多いです。

最高視力の視力って、(1.2)でしょうか。
最高視力の視力は、(2.0)の状態です。
でも、実際の視力検査のときに(2.0)まで測ることはありません。
メガネ合わせのときに、どうしても必要な特殊なケースだけ(2.0)や(1.5)を意識して測ることがあるかもしれません。
でも、基本的に定期検査で視力検査をするときは、(1.2)見えればOKです。
ということは、自覚的屈折検査が終わって(1.2)見えた状態は網膜の少しだけ手前にピントがある状態になります。
視力とピントのイメージを頭に描いて、今、自分がしている視力検査は網膜にピントをのせているのか、少し手前の状態なのか場面によってイメージできれば、検査の上達につながりますので意識してしてみてくださいね。
ピントの動きをイメージ化することが大切です。
自覚的屈折検査で遠視・近視・乱視を測ったときの、ピントの動きとピントの位置をおさらいします。
どの場合も、ピントは網膜の少し手前になったとことで、自覚的屈折検査が終了します。
遠視の場合
網膜の後ろのピントを網膜の中にもってきて
少しづつ網膜に近づけて、網膜の少し手前でストップ(1.2見える)イメージ
近視の場合
近視ははじめから網膜の中にピントがある状態なので
少しづつピントを網膜に近づけて、ほんの少し網膜の手前で自覚的屈折検査終了
乱視の場合
乱視は前のピントと後ろのピントの位置が違う状態。
近視と近視の乱視・遠視と遠視の乱視・近視と遠視の乱視の3種類ありますが、まずは後ろのピントが遠視であれば、網膜の中に後ろのピントをいれます。
そこから最小錯乱円の場所を探して
もう1度後ろのピントを網膜の中に入れる
前のピントを後ろのピントにくっつける
前のピントと後ろのピントが1つになったので、そのまま網膜の手前にピントを動かして終了
詳しくは自覚的屈折検査の基礎シリーズに書いています。

乱視が割り切れる時の等価球面のおさらい
次に等価球面について、おさらいをします
自覚的屈折検査の乱視度数と、レフの乱視度数が違う時は

レフと自覚どっちが正しい?
という疑問が出てきます。
確認するためには等価球面を使います。
- 自覚 S-3.0D:C-2.0DAx90°
- レフの値 S-4.0D:C-1.0DAx90°
この場合は乱視をC-2.0DからC-1.0Dに等価球面したいので、S-3.5D:C-1.0DAx90°と自覚的屈折検査のS-3.0D:C-2.0DAx90°でどちらが見やすいか比べることができます。
・S-3.0D:C-2.0DAx90°(自覚)
・S-3.5D:C-1.0DAx90°(レフ)
・乱視が小さくなると、S面の度数はマイナスに動く

等価球面値がわからん!
という人は等価球面シリーズ①から読んでくださいね


乱視が割り切れないときは、プラスよりのレンズを採用

イメージ復習ができたので、乱視が割り切れないときはどうしてプラスよりのレンズを採用するのか考えましょう
自覚的屈折検査が終わって視力が出たとき、ピントは網膜の少し手前にあります。
乱視が割り切れないとき、マイナスよりに等価球面したらピントは自覚的屈折検査のピントの位置より少し網膜に近づいて
プラスよりで等価球面したら、ピントは元のピントの位置より少し網膜の手前になります。

あなたなら、どっちのレンズを採用しますか?

私は、プラスよりの等価球面を採用しています

せっかく、自覚的屈折検査を頑張って聞いたんだから、自覚の結果が正しい乱視であってほしい!
そんな、私の願望も入っているかも。(若いころ、実習先の先輩に教えてもらったことなので、私個人の考えではないですが…)
自覚的屈折検査で出たピントの位置が、網膜の手前のオレンジの位置だったとき
マイナスよりのレンズで等価球面したら、ピントはより網膜に近づきます。
網膜に近づくとハッキリ見えます。
レフの乱視が正しいからハッキリ見えているのではなくて、網膜にピントが近づいているからハッキリ見える可能性が大きくなります。
せっかく、一生懸命乱視を調べたのに、これではすごく残念です。
反対に、等価球面でプラスよりにした場合、ピントは網膜から離れます。
網膜からピントが離れるので、自覚的屈折検査の見え方より少しぼやけるはずですね。
すこしぼやけるハズのピントの位置なのに

自覚の乱視度数よりレフの乱視度数の方が見やすい
そう言われたら、レフの乱視度数の方が正しいということになります。
・ま と め・
自覚的屈折検査とレフの乱視を等価球面してどちらが見やすいか比べたいとき、乱視が割り切れないときは少しプラスよりに等価球面する。
プラスよりに等価球面しているのに、レフの乱視度数の方が見やすいと言われたらレフの乱視度数を採用する。
練習問題でイメージ化

練習問題で、どんどんイメージ化していこう!
割り切れない乱視の計算方法を復習
等価球面をプラスよりとマイナスよりにする方法は、前回の「等価球面を極めるシリーズ⑧等価球面したいけど乱視が割り切れない・考え方」で紹介してます。

簡単にまとめると…
乱視を少なくして等価球面するとき
乱視を大きめにして計算したらマイナスより、小さめにして計算したらプラスよりになる。
S面がプラスより、マイナスよりになれば、等価球面値もプラスより、マイナスよりになる。
乱視を大きくして等価球面するとき
乱視を大きめにして計算したらプラスより、小さめにして計算したらマイナスよりになる。
S面がプラスより、マイナスよりになれば、等価球面値もプラスより、マイナスよりになる。
自覚的屈折検査の乱視度数とレフの乱視を比べるときは、少しプラスよりのレンズを採用するので、プラスよりの等価球面の計算方法ををまとめておきます。
乱視を増やして等価球面するときは、1つおおきい乱視で考える
乱視を減らして等価球面する場合、1つ少ない乱視に置き換えて考える
矯正度数でイメージのおさらい
S-3.0D:C-1.5 DAx90°をC-2.25Dにしたい場合

C-1.5DをC-2.25Dにしたので乱視を0.75D増やして等価球面したい

でも0.75Dは割り切れない
乱視の幅を広げて等価球面したいので、乱視を0.75Dではなく、1つ大きい1.0Dと考えて半分の0.5DをS-3.0Dに足してあげると等価球面はプラスよりになりました。
乱視幅を広げるのでS面はプラス方向に動きます。
- S-3.0D:C-1.5 DAx90°(自覚)
- S-2.5D:C-2.25DAx90°(レフの乱視で等価球面したもの)
S-3.0D:C-1.5 DAx90°(自覚)が見やすいと言えば自覚で測ったS-3.0D:C-1.5 DAx90°を採用します。
レフの乱視で等価球面したS-2.5D:C-2.25DAx90°が見やすいと言われれば、S-2.5D:C-2.25DAx90°を採用します。
S-3.0D:C- 2.25DAx90°をC-1.5Dにしたい場合
C-2.25DとC-1.5Dの差は0.75Dなので割り切れない。
この場合は、等価球面値をプラスよりにしたいとき、動かしたい乱視を1つ小さくして考えます。
動かしたい乱視の量は0.75Dなので、0.5Dと考えてS-3.0Dを0.5Dの半分の0.25D動かします。
動かす方向は乱視を少なくする(乱視の幅が狭くなる)のでマイナス方向です。
- S-3.0D:C- 2.25DAx90°(自覚の結果)
- S-3.25D:C-1.5DAx90°(レフの乱視で等価球面した度数)
この2つの度数を比べてもらって、見やすいレンズを採用します。
どちらも同じ見え方の場合、乱視がきっちりと聞けていれば自覚歴屈折検査の結果を採用します。
補足ですが
視力検査の結果の横に等価球面の情報をコメントを残すと、次回の視力検査やメガネ処方のときに参考になります。
・自覚の方が見やすい
・レフの方が見やすい。自覚はC-2.25Dまで入る
・レフと比べるも、見え方同じ
などの情報を補足としてカルテに書いておくといいですね。
等価球面を考える時、私の場合ですが、乱視が大きくなると、度数がプラスよりに動くというイメージが基本にあって、そこからイメージをふくらませている感じです。
言葉で覚えるのではなく、イメージで覚えると忘れにくいです。
練習問題でイメージを固めて実践につなげる

自覚的屈折検査は割り切れないとき、プラスよりのレンズで等価球面するということがわかったので、次は実際に度数を見てイメージを固よう!



- S-5.0D:C-2.0DAx90°(自覚)
- S-4.5D:C-2.75 DAx90°(レフの乱視で等価球面)
この2つのレンズを比べて見やすい方のレンズを採用します。
見え方が同じなら自覚的屈折検査の結果を採用します。
S+3.0D:C-1.5DAx90°の乱視をC-2.25Dにしたい。
乱視の差は0.75D
割り切れない。
乱視を大きくして等価球面するときは、大きめの乱視で計算したら、等価球面もプラスよりに動きます。
乱視を0.75Dではなくて1.0Dで考えると、半分は0.5D
S面のS+3.0Dに0.5Dを加えてプラスよりに動かします。
- S+3.0D:C-1.5DAx90°(自覚)
- S+3.5D:C-2.25DAx90°(レフの乱視で等価球面)
この2つのレンズで、患者さんに見え方を比べてもらいます。
乱視を減らして等価球面したい場合、割り切れないときは1つ小さめの乱視で計算します。
小さめの乱視で計算すると、後ろのピントの位置が少しプラスよりになります。
後ろのピントが少しプラスよりになると、等価球面値もプラスよりになります。
S-1.0D:C-2.5DAx90°をC-1.75で等価球面したい場合、乱視幅を0.75D狭くして等価球面したい。
0.75Dは割り切れないから0.5Dで考える。
0.5Dの半分は0.25D
S面は0.25Dマイナス方向に動きます。
- S-1.0D:C-2.5DAx90°(自覚)
- S-1.25D:C-1.75DAx90°(レフの乱視で等価球面)
この2つのレンズでどちらが見やすいか、クッキリ見えるか患者さんに答えてもらいます。
S+5.0D:C-3.25DAx90°の乱視をC-2.5Dにして等価球面したい。
ということは乱視を下げて等価球面したい。
でも3.25D→2.5Dの差は0.75D
0.75Dは割り切れない。
乱視を下げて等価球面するので、小さめの乱視で計算します。
0.5Dで考えると半分は0.25D
- S+5.0D:C-3.25DAx90°(自覚)
- S+4.75D:C-2.5DAx90°(レフの乱視で等価球面)
どちらが見やすいか確認します。
S+1.0D:C-2.75DAx90°の乱視をC-3.5Dの乱視で等価球面したい。
乱視の差は0.75D。
割り切れない。
乱視を大きくして等価球面したいので、乱視の幅を少し大きめの1.0Dで計算します。
大きめで計算したら後ろのピントが少しプラスよりになるので、等価球面値もプラスよりになります。
- S+1.0D:C-2.75DAx90°(自覚)
- S+1.5D:C-3.5DAx90°(レフの乱視で等価球面)
どちらのレンズが見やすいか答えてもらいます。
S+0.5D:C-3.5DAx90°の乱視をC-1.75Dの乱視で等価球面したい場合。
C-3.5DとC-1.75Dの差は1.75D
割り切れません。
乱視を少なくして等価球面するので、S面はマイナスに動きます。
少しプラスよりで等価球面したいときは乱視幅を1つ小さくして計算します。
乱視を減らして等価球面するイメージはこうです。
よりプラスよりで等価球面したいから、小さい乱視で計算して等価球面します。

乱視が減っているので、少ない乱視で等価球面しなきゃ。

乱視が減っているからS面はマイナスに動くね

3.5と1.75の差は1.75。

ちいさめの度数で考えると1.5

1.5Dの半分は0.75D

S+0.5Dを0.75D分マイナスに動かすとS-0.25D
- S+0.5D:C-3.5DAx90°(自覚)
- S-0.25D:C-1.75DAx90°(レフの乱視で等価球面)
この2つのレンズでどちらが見やすいか、比べてもらいます。
まとめ
今回の話は、実践編・等価球面の使い方でした。
教科書にはのっていないけど
実際に検査してたら経験する不安。

割り切れないとき、等価球面どうしたらいいの?

自覚の乱視の結果がレフと違うけど、あってるの?
実際の検査では、乱視を聞ける検査員のスキルであったり、レフのばらつき具合、患者さんの応答など、いろいろなことを考えて、自覚とレフの乱視どっちが正しい可能性が大きいかと推し量る経験も必要になってきます。
でも、まずは、自分の検査結果に自信をもつべきだと思います。
とくに矯正視力が(1.2)すっきり見える大人の場合は、自覚的屈折検査も聞きやすい。
まずは、聞きやすくて視力が出る人から経験して、実践力アップを目指すと上達が早いです。
視力検査は自覚的屈折検査なので、答えがわかりにくい。
うまく聞けないときやレフと違う結果になったときに

自分の経験不足…

どうしたらいいのかわからない
という気持ちになることが多いです。
そんなとき、今日の話を参考にしくれたら嬉しく思います。
レフと自覚の乱視を確かめたとき

自覚の乱視のレンズを入れたほうが見やすいです
そう言われたときのうれしさは、たまりません。ほんとに。
もちろん、レフの方が見やすいと言われることもたくさんあります。
経験数があっても、レフの方が見やすいという結果になりときもたくさんあります。
経験していくと

これは乱視がきけないパターンだな

練習していけば、この人乱視聞けるようになるかも
と勘が働くようになります。
絶対に正解がない感じが自覚的屈折検査のムズカシイところだけど、楽しいところでもあります。
今日のポイント
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