43歳の男の人。使っているメガネはS-4.0D。
視力検査をすると、自覚的屈折検査の結果はS-3.25D。

近くが見にくんです。だから老眼鏡を作りたいんです
そういわれたらどうしますか?

むずかしー!!どうしよ?
そう思ったら続きを読んでくださいね
近視の過矯正ってどんな状態?
Aさんの場合
- 43歳の男の人
- 使っている近視のメガネはS-4.0D
- 視力検査をすると、自覚的屈折検査の結果はS-3.25D
主訴は近くが見にくい。だから老眼鏡を作りたい
この近視の状態をイメージで考えてみましょう
患者さんの近視の状態。近視なので網膜の中にピントが合います
網膜からピントがあう場所が離れていると、ぼやけて見えます。
Aさんが遠くを見るためにはS-3.25Dの近視のメガネをかけて網膜にピントを合わすことが必要。Aさんは、S-3.25Dの近視のメガネをかければ網膜にピントが合います。
この状態が遠くを見るのに1番いい状態。
でもAさんのメガネはS-4.0D。
S-3.25Dの近視の人がS-4.0Dのメガネをかけたらどうなるでしょうか。マイナスのレンズは後ろ(図でいうと右)にピントをずらします。
なので、S-3.25Dの近視の人がS-4.0Dのメガネをかけると網膜をすぎて、網膜より後ろにピントがあってしまいます。遠視の状態になります。

あかーん。。。
この状態を過矯正といいます
近視が過矯正になると、網膜より後ろになってしまったピントの位置を網膜にもどさないといけません。

網膜より後ろになってしまったピントの位置をどうやって網膜にもどすでしょう?
調節力という自分の目の力を使って網膜にピントを合わせます
調節力を使わない状態だと網膜にピントが合わずにピンボケになります。ピンボケをなおしてキレイな映像を見るために自分の調節力を使うのです。
調節力を使ってる状態はグググッと目に力が入る感じ。極端な例だけど、より目にして遊んだとき目に力が入っている感じありますよね。より目にして近くを見るときは調節力をものすごく使っています。
↑極端なより目の写真ですけどね・・・。
調節力を使うと目の筋肉を使っているので疲れます。なので近視の過矯正メガネをかけていると、目が疲れやすい状態になります。
ここでAさんとBさんの例で考えます
自分の目の近視の度数 S-3.25D
メガネの度数 S-4.00D
遠くを見るとき-0.75D 調節力を使って見ます
自分の目の近視の度数 S-3.25D
メガネの度数 S-3.25D
遠くを見る時は、力を使わなくても見ることができます
Aさんは遠くを見る時にいつも余分な力を使わないといけないので、目が疲れやすくなります
Bさんが正しいメガネをかけている状態です

近視の過矯正メガネで近くを見ることのデメリット

Aさんのように、過矯正メガネを使っていて遠くを見るときに調節力を使ってみている人が、近くをみるときはどうなると思いますか。
近くを見るときは、網膜の中にピントが合わないといけません。図でいうと網膜より左にピントが動きます。(正確には水晶体がふくらんで、網膜にピントを合わすのですが、初心者さんは網膜の中にピントが動くと考えた方がわかりやすいかなと思います。)

ピントを網膜の中にもってくるときに使う力は?
そう調節力です。調節力を使って近くにピントが合うようにします。
使う調節力は新聞や本など30cmくらいで読むときは約3.0Dの調節力が必要です。
AさんBさんの例に戻って考えます
自分の近視の度数S-3.25D。メガネの度数S-4.00D。
Aさんはメガネをかけて遠くを見る時、調節力を0.75D使っています。
近くを見るときは、さらに3.0Dの調節力を使います。
遠くを見るときに使っている調節力と、近くを見るときに使う調節力を合わせると、Aさんは近くを見るとき、3.75Dの調節力を使います。
自分の近視の度数S-3.25D。メガネの度数S-3.25D

メガネをかけて遠くを見るときは、網膜にピントが合っている状態なのでとくに力は使っていません。近くを見るときに3.0Dの調節力を使います。
老眼初期は近視は過矯正メガネをやめることが1番
少し老眼の話をします。
老眼は近くが見にくくなると思われていますが、そうではありません。
調節力が弱くなってくる状態が老眼です。
白髪や体力と同じで40代から少しづつ、少しづつ調節力が弱くなります。65歳くらいで調節力はなくなります。
近くを見るとき、調節力を3.0Dくらい使います
調節力が弱くなって2.0Dになると、近くを見るのに1.0D足りません。30cmの距離で本を読もうとすると、ぼやけて見えます。
なので、足らない調節力であるS+1.0Dの老眼鏡をかければ、自分の調節力2.0Dと合わせて3.0Dになり、30cmの本が読めるようになります。
これ以上調節力について詳しく書こうとすると、やや難易度があがって混乱するので、とりあえず、ざっくりと調節力と老眼鏡の度数の関係をイメージしてもらえたらいいと思います。
またAさんとBさんの話で考えます
AさんBさんは2人とも45歳で調節力が3.0Dあると考えます。
自分の近視の度数S-3.25D。メガネの度数S-3.25D。調節力3.0D
自分の近視の度数S-3.25D。メガネの度数S-4.00D。調節力3.0D
Aさんはメガネをかけて遠くを見るのに調節力を0.75D、近くを見るときに3.75D使う。なので、調節力が足らずに

メガネをかけて近くを見たらピントが合いにくい
そう感じます。
同じ年齢、同じ目の度数で同じ調節力がある人の場合、過矯正メガネを使っている人の方が老眼を感じやすくなるのです。
ここで問題です!!!
過矯正メガネをかけている人に、近くが見にくいからといって老眼鏡をすぐに処方するといい。


近視の過矯正メガネのまとめ
- 近視の過矯正メガネとは、自分の近視度数より強いメガネのこと
- 近視の過矯正メガネを使うと目が疲れやすい
- 近視の過矯正メガネを使っていると老眼を感じやすくなる
- 近視の過矯正メガネを正しい度数にすると、近くが見やすくなる。
患者さんに「近くが見にくい」と言われたら

老眼鏡が必要ね!
すぐにそう思いがちですが、まずは遠くのメガネ度数が合っているかチェックすることが大切です。